もう靴擦れしない人生のため、足の委細を知り、靴をフィッティングするのだ

これを読んでくださっているあなたは、ご自身の足のサイズを知っているでしょう。足のサイズというのは足長、字のごとく足の長さです。デパートの靴やさんでは選びやすいようにサイズ別に靴が並んでいます。そんなデパートで靴を買うような私は、数時間前の17時まで、てっきり「靴はサイズで選び、試し、履き心地が悪くなければ買うもの」と思っていました。履き心地は悪くないけれど、長時間歩けば靴幅が広がってきたりやけにヒールが磨り減ったり靴擦れしたり。それがふつうだと思っていた。そんな数時間前の私と同じように考えている人がいるなら、声高らかに普及したいサービスがあります。それが「My foot station」、足と靴のフィッティングサロンです。

皆さんは足のサイズを聞かれたとき、たいてい、いつも履いている靴のサイズを答えると思います。
ですが、それは本当にお客様の足のサイズでしょうか?
メガネを買うときは必ず検眼をします。ですが、靴を買うとき、足のサイズをきちんと測ってくれるお店は少ないです。
ためし履きして、店内を少し歩いてみて、それで大丈夫だったら買う、そういう方が多いでしょう。
しかし、いざ外で履いてみると足に合わない、痛くなる・・・そしていつの間にかお蔵入り。
そんな失敗を繰り返している方も多いのではないでしょうか。

靴が合わないのは、お客様がご自身の足のことを知らないから。
なぜ知らないのかといえば、調べる手段がなかったから。
そう当店では考えます。

このフィッティングサロンは、3D足型自動計測機(片足約3万カ所の計測ポイントで足首から下を立体的に計測する)を用いて、足のサイズ・状態と、立ち方を調べ、あなたの足にあわせて、靴を調整してくれます。計測や説明が詳しくて詳しくて、通常、「サイズ」として認識していた「足長」以外に、実は重要な「ウイズ(足囲・足幅)」、「踵幅」、座っているとき・立っているときの「重心」を知ることができます。これまでほとんど知らなかった自分の足に向き合い、あなたの靴選びに「サイズ」以上の理解を取り入れるはずです。私はこれまでの靴選び、ぜったい間違っていた。足に合っていない靴を履くことで、足は間違った方向に力が入り、足の形がどんどん歪んでいくそう。悪いループです。

お気に入りの靴を「頑張って」履いている方、お気に入りの靴やこれからの靴選びをアップデートできる近道を見つけました。ブログを読んでくださるよりも、あなたのために、ぜひ予約を!と思っていますが、自分のために記載しておこう。はあ、感動した。正しい足に戻すために、靴もすべてフィッティングし直し、靴選びをアップデートしたくなること間違いなしです。決して、お店の回しものでなく、靴選びをもっと正しく、楽しくするために。

 

 

大通り、高架下を通り、カフェベローチェを15mほど過ぎて左道に入ると、ウェブサイトで見た通りのお店がある。丸見えの店内には先客がいる、引き戸を開ける。すぐに接客を止めるのでなく、十分に区切りを待ってから店員さんはお店用のサンダルを私の足元に並べてくれる。「いらっしゃいませ」でなく、私が足を滑り込ませたサンダルをピッと留め直しながら「細いですね」と言ったのが店員さんの第一声だ。

先客は男女の二人連れで男性はスニーカーを試し履いている、女性は「私も予約していこう」と言っている。壁に備え付けられた棚に飾られた靴、革靴や色とりどりのパンプス、スニーカーを視界に入れて、私は素知らぬ顔で待っている。先客の二人がお店を出ていき、店員さんは休む暇なく「どうぞこちらに」と言う。

早速、白い箱に入れてきたパンプスを「気に入って買ったのだけれど、靴擦れがして履けないので直したい」のだと伝える、でも伝える間もなく店員さんは「あなたの足は踵が細いからこの靴は大きい、市販の靴じゃ合わないでしょう」と言う。脚が細いという感覚は理解できるが、足が細いというのは具体的に何を指しているのかこの時点で私は理解していない。

そこから、「実際にあなたの足を見てみましょう」と言って、店員さんの示すままに両足のサイズやバランスによる重心の動き、足の指の使い方を測る。(この一部始終を伝えるには百聞は一見にしかずで行ってみるべき)測定をもとに丁寧に説明していただいた内容が、これがすごかった。

私の場合、足長は24cmだが、踵幅が55mm。24cmのひとの平均的な踵幅は64~66mmであり、世間の靴は平均サイズに合わせてほぼ設計されているのに、55mmと64〜66mmでは1cmもずれている。ずれがあるために、24cmの靴を選ぶと踵幅に余裕があり、固定されないため、前滑りして、指先が本来あるべき地点よりも前に押されて指たちの行き場が失われている。店員さんはじっとしてあくまでも丁寧に説明し、足の骨の模型を見せてくれながら、私の足の骨を押す。すると、私の足の指がじわーっとほどけ、本来あるべき、指のラインにまっすぐと開かれてゆく。人差し指にぎゅうぎゅうと接して窮屈そうにしていた親指は元に戻り、薬指にしなだれかかっていたような小指は自分を取り戻していったように見える。肩を寄せ合っていた真ん中3本の指も等間隔を取り戻していく。

今日まで、靴を履くと大体の指が窮屈になるのは足が大きいからだと思っていた。実際、そうでなく、足長に合わせると踵幅が大きく、足が固定されていないために指たちに負担を負わせていたことが理解できる。私にとっては目からミラクル鱗。

店員さんが私の足に合わせてその場で仮調整を施した靴を履くと、指が痛くない。足が本来あるべきカーブを取り戻し、足がキュッと高さを取り戻している。驚いている私に、店員さんは「いろいろもっと言いたいけれど、言うと靴選びが難しくなってしまいそうなので、ゆっくり話していきましょう」と言い、会計をすませる。受け取りはちょうど1週間後である。店員さんの最後の言葉は「ありがとうございます」でなく、「しっかりやらせていただきます」だった。

ネットとリアルの店を行き来して

 

「どこらへんで洋服買ってるの?」その質問は、洋服が欲しくてぶらぶら繰り出すとき、どういった街のどういったお店に足を向けるのか訊かれているのだと思う。思うと同時に、ここ2年はそんな歩き方をしていないことに気づく。質問はリアルで買い物をする人が前提だ。ここ2年は、インターネットで目星をつけて、返品できる商品なら実際に買って着てみる(返送料はお店までの交通費と考えればイーブンだしむしろお得だ)、返品できない商品なら下調べを重ねて「ポチッとカートに入れて、決済に進む」気持ちに勢いを乗せるか、行動圏内に実店舗があれば仕事なんかとあわせてお店に行くことのできる隙間時間を探して予定に書き込む。私の答えは「大抵インターネットですね」。

山内マリコさんの「買い物とわたし」は洋服に限らず、ロンシャンのナイロントート、シュット!インティメイツの下着イノベーションなど「どこにでても恥ずかしくない30代」のポップなお買い物エッセイ。日常をすこし背伸びしたような買い物話は聞くのが楽しい。私は友人によく「ここ最近の一番の買い物」を訊ねる。ということで、すぐにインスパイアを受ける20代のお気に入りの買い物をメモしてみる。冒頭の通り、ネットを起点にリアルで買い物をしています。

 

  • KEIKO MECHERIの香水「PEAU DE PECHE」

 香水を変えたくて、清潔な香りということだけ決めて、桃の香りに行き着いた。山内マリコさんの本にきっかけをいただいたこの流れにふさわしく、お伊勢丹で試してレジに。いやらしくなくて、色気がある、いい香り満載。ビンも上品で、外に出かけるためのスイッチとして気分を高めてくれる。

 

  • BARE FOOT DREAMSのシングルブランケット / stone

 大げさな響きだけれど、一生もののブランケットを見つけるきもちで。なんだろう、どうしてずっとこんな柔らかでいられるんだろう、と、それが仕事のはずのブランケット相手に毎夜思っています。2年経っても裏切らない、むしろ絆を深める安眠の味方。

 

  • MOTHER HOUSEのビジネスバッグ「アンティーク クラシック ビジネス」

 復職のお祝いに。購入当初はあまりにもカッチリとしていて、私には上質でビジネスライクすぎたかと感じていたのを懐かしく思えるほど、レザーが自分の肌に馴染んで、いい具合に変わりゆく経年変化がたまりません。勝負するときはこのバッグがいい。

 

  • Lunorの丸メガネ

 有給をとって過ごしたクリスマスに友人と「いい買い物をしよう」と思い立ち、ピンときたまま銀座のセレクトショップという名の清水の舞台から飛び降りた。始めは気恥ずかしかったけれど、丸メガネの日々は新鮮で、今では丸メガネの人を見かける度に「いいよね」と共感しています。

 

  • ロベルタ・ピエリのラージトート / tatami

 今年の誕生日に。山内マリコさんはパリでロンシャンのナイロントートを買っていたけれど、私は東京駅でロベルタ・ピエリを初めて見かけてから「絶対こっち」と目をつけていました。耐久性に優れてていてA4書類もPCもへっちゃらで、落ち着いた色合いが多い格好の癖づけにも一役買うなんて、優秀すぎる。仕事用にもプライベートにも、さっと肩に引っ掛けて出かけている。

 

なんて5つの買い物をメモしたところで、他にもとっておきの買い物はあるだろうかと自室を見渡した。ほとんどを常にお気に入りにアップデートしていっているため、とっておきでないものがほぼないように感じた。最高の眺めである。

それではこれからのとっておきの買い物は、というと、5月に届く予定のAmeri VINTAGEのトレンチコートをたった今心待ちにしている。トレンチコートは毎春悩んでいて、悩んで調べ尽くしている間に今年も春を迎えたため、26年目にして初めて購入した。このトレンチコートは予約商品であったため、冒頭でいうところの調べに調べを重ねて、実物を見る前に気持ちをジリジリとジェットコースタの登りのように、買いたい着たい思いを膨らますに膨らませて、ようやく1週間前に決済に進んだトレンチコートである。5月も中旬になれば、お店から「お待たせしました。商品を発送しました」とメールが届いて、ヤマトだったら「お荷物が届きます」の連絡がLINEできて、ヤマトでなければポストを確認する朝夕が始まり、ポストに不在票が入っていれば宅配ボックスに入れてくれたか確認し、どうしてか宅配ボックスに入れてくれない業者であれば、QRコードを読み込んで再配達の連絡を迅速に行い、ようやく届けば、届いたダンボールを机の上で鋏も使わずにコツを抑えてガムテープを剥がして、紙切れの領収書は端に追いやり、透明のビニールに包まれて折りたたまれたトレンチコートを目で見て、ビニールの留めをそっと破って、いよいよ右手で吊るすように持ち、全体像を掴み、着ているものがパジャマでなければさっと上に羽織り、「これかあ」と鏡の前でためつすがめつする日を心待ちにしている。

父には味がある

父と海外旅行に行ったのは小学生のときが最後だ。旅行によく行く家庭で、世間と休みをずらしてよく海外に国内に旅に出かけた。そんな旅のあるとき「もう俺は海外旅行に参加しない」と父は宣言した。宣言を全うする人で、海外旅行は母と兄と3人で行くものになった。父が参加しなくなった旅行は3人で行くものになり、3人で行くものになった旅行は友人と2人や3人や4人で、時に1人で行くものになった。

それなのに、高校生でも大学生でもなくなった今、キャセイパシフィック航空の機内に父と私が並んで座り、父の膝に脚を乗せ私の膝に頭を乗せ眠るこどもと3人で台湾に出かけた。父は孫を寒くないかと気遣いながら「孫は英語でなんて言うんだろう」と呟いた。これから向かう外国で、何か説明する機会があれば英語でいうつもりなのねと柔らかなきもちで「わからないね」と返事をする。飛行機は成田から台湾に向かう上空、孫を英語で何というか教えてくれない機内モードである。

父は台湾でとてもいいおじいちゃんだった。こどもが近寄れば抱き寄せて様々な表情であやし、こどもがどこかよたよた歩いていけば見るからに危ないものは除いて眩しそうに見守り、食事中は自分の小籠包を箸で器用に小さく切って少し冷ましてこどもの口に甲斐甲斐しく運んだ。ただ、ところどころやっぱり父だった。朝、雨続きで湿気深い台湾に目覚めて「湿気がすごい」というと「そうなんだ」と遥か遠くの地の気候を伝えられた人みたいな返事をする。台湾で何度もお会計をしたのに、インドネシアのコインを間違えて店員さんに渡しては「これはインドネシアだ」と確認をする。最終日に「お金の両替は日本でする?」と訊くとまだ数万円分の台湾ドルを持っているはずなのに「次に来るときのプレッシャーのために両替はしない」と答えて、新しい考え方だと関心していた30分後に両替をしている。そうだ、父は予想の斜め上をいく。

 

 父は台湾で行きたいお店やレストランを、「白いノート」にメモして持ってきていた。何か見直したい度に、荷物係の私に「白いノートを出して」と言った。手書きでお店の名前、読み方、住所、注文したほうがいいメニュー、地図が書いてある。父の机と似て、雑多だけれど、ひとつひとつはなんだかいい感じのものに見えるノートだった。

 

父の白いノートのおかげで、人気店では内用(イートイン)と外帯(テイクアウト)の列を間違えずに並ぶことができたし、メニューに掲載されていなくても「Can I order this?」と尋ね、出してもらうことができた。私は父の決して上手くない手書きの文字が常々なんとなく好きで、手帳はきれいに書かないと気が済まない私からすると、白いノートは自由で特別なものに思えた。行かなかったお店の地図も残るなんてすごい、思い出になるノートだ。

そんなノートを、外に少し出かけるとき、父はそんな白いノートを目の前でピリピリと破いて、「さあこれだけ持って行こう」とあるページの下半分、1つのお店の情報だけ書かれた切れ端をひらひら持ってドアに向かった。私は唖然として、だって、この白いノートはせいぜい70枚くらいの薄いノートなのに、どうしてノートを破る必要があったのか、思い出はどこに、よっぽど持ちにくいじゃないか、と驚いた。父は抱いた孫も軽そうにさっさと歩いていく。そうだ、私はまた油断した、父は予想の斜め上をいく。

孫が英語で「Grandson」というのは4日ぶりに日本で眠る夜に携帯で調べて知った。すごく簡単だ。Grandfather 、Gandmotherから容易に想像がつく。台湾を通じて、ずっと狐につままれたような気分を味わっている。

江蘇料理也很好吃!

世界各国旅先では、「こんにちは」「ありがとう」「おいしい」、3つの言葉を覚えて歩き回ります。中国語でいうと、なんだか馴染み深い、「你好(ニイハオ)」「謝謝(シエシエ)」「好吃(ハオチー)」の3つ。今回もこの3つを携えて、3泊4日台湾をたのしんできました。旅は日記をつけるまでが旅。旅納めに、今回の台湾旅で2夜連続楽しんだ、中国本土 江蘇省の食事について記しておきたい

 

まず、 今回宿泊したホテルは金來商旅(Royal Biz Taipei)、徒歩10分弱で永康街に辿りつける立地です。永康街とは、泰豐本店を始め、牛肉麺、茶藝館、台湾家庭料理の立ち並ぶ、観光に歩きやすい界隈(グルメ以外もちゃんと充実している)。そんな魅力的な永康街近くのホテルにチェックインした夜、まずは鼎泰豐で楽しみ、さて、台湾だあ、と思っていれば、すぐに2日目の夜がやってきます。お昼ご飯が好きだ。だけど、やっぱり夜ご飯が特別に好きだ。お昼よりもずっと時間をかけて、もっとたっぷり食べることのできる気がして、ご飯もお酒もたらふくとってホテルのベッドでねむるだけ。むずかしいことは何もない。昼は明るい、夜は長い。

そこで、「このお店、ananで特集されていた台湾家庭料理だよ」と教えてもらい、ふと足を運んだのが永康街をまっすぐ、少し右に入る「六品小館」。台湾家庭料理の中でも江蘇省のお料理らしい(後で調べたところ、素材を活かして薄味の味付けをする江蘇料理と日本料理は姿勢が似ているらしい)

 

を押して入ると地元の方らしき人たちが多くのお皿を前に賑わっている。4人掛けのテーブル席に通してもらうと、日本語のSpeciality Menuと英語のGrand Menuがポンと置かれる。お茶は中国茶をポットのまま置いてくれる。

 

オーダーは、台湾ビール、「豆干牛肉絲(干し豆腐と牛肉の細切り炒め)」、「涼拌白菜心(白菜・パクチー・干し豆腐・ピーナッツの和え物)」。中国語は漢字から材料や調理方法を想像するのが楽しいです。どちらも食感が楽しく、豆干牛肉絲は干し豆腐が牛肉の美味しさを染み込んでいるのか、ずっとたべられる美味しさ。これを食べたくない人はいないような秀才っぷり。涼拌白菜心は甘めの酸っぱい味付けが味のしっかりしたおつまみになり、白菜のシャクシャク食感にパクチーの癖がシャンとしてピーナッツがカリッとして、味も食べ応えもフルーティな台湾ビールにベストマッチ。この時点で、もう江蘇料理が大好きになっている。

 

次に「砂鍋獅子頭(肉団子の鍋煮込み)」。これはSpeciality MenuでもNO.1を飾っていて、周りを見渡せばどのテーブルにも運ばれている。しっかりした肉団子にみえるも、食べればふわりと蕩ける肉団子で、煮込まれた白菜とスープも果てなくおいしい。ずっと飲める。この時点で、翌日もこのお店に来たいと思う。


www.tripadvisor.jp

 

食べたいきもちと裏腹に、台湾料理、ファミリー向けか量がしっかりとあり、残念ながら2人では3品でお腹が膨れてしまい、翌晩に持ち越し。その翌晩、意気揚々と同じお店、にはせず、江蘇料理がおいしいの?それとも六品小館が圧倒的においしいの?を確かめたく、永康街にある別の江蘇料理のお店「秀蘭小吃」に。こちらは一青窈さん御用達のお店らしい。

 

 こちらは日本語メニューがあり、見てみると「豚のあばらをあぶります」なんてチャーミングな翻訳が光る。オーダーは、台湾ビール、「里芋・ねぎ」、「砂鍋獅子頭」。里芋はシンプルに煮込んでねぎが添えているだけなのに、ホクホクとってもおいしい。里芋を見直す一品。砂鍋獅子頭は白菜に隠れた肉団子が六品小館のものより丸く大きいのに、また、たべるとホロホロ蕩ける。おいしい、私これを主食にする。

 

「はまぐりの炒めもの」、夢中で写真を撮り忘れた「牛肉と大根の煮込み」。素材の良さを引き出す江蘇料理だからこそ、頼んだメニューすべての味付けが様々。なんだか「中華料理」を食べているという気にはなりません。きになるのは、台湾の方はお店でお酒を飲む文化が少ないからか、台湾ビール以外のお酒の品揃えは紹興酒1瓶売りだけ。合うお酒を変えるだけでその場の空気も変わるから、いろんなお酒と合わせて食べてみたい。江蘇料理、まだまだきっとどんな味わいも見せてくれる。

 

www.tripadvisor.jp

こうして温めたのは胃か胸か、最終夜を過ごしたのでした。江蘇料理の2晩を経て、翌日帰国。台北駅から桃園空港に向かうMRTの車中「どのお店の料理が一番美味しかった?」のお題では六品小館、秀蘭小吃に一票ずつ入る、江蘇料理が心に残る旅となりました。シンプルで、おいしい。おいしいものの前でむずかしいことや大層なことは何も言えないけれど(口はたべるためにある)、今度は江蘇料理を食べることを目的に旅に出よう。

 

もちろん、江蘇料理以外にも、鼎泰豐の「糸瓜蝦仁小籠包(ヘチマと海老の小籠包)」も、ロープウェイで行く邀月茶坊の茶葉料理、特に「茶油繊緑炒飯(お茶の香りパラパラ散りばめられた絶品飯)」「觀音湯包(お茶の小籠包)」も、オフィス街に佇む富覇王豬脚極品餐庁の豚足定食、「霸王腿扣(柔らか太もも)」「蘿蔔湯(大根スープのなんて澄んだ滋味溢るる)」「魯肉飯」もおすすめできます。海外の食事は味だけでなく、あの空気丸ごと、おいしく感じる。ごちそうさまでした。

 

スーパー銭湯の近くに住みたい

どこの銭湯にも「赤鬼」がいる。鬼は赤い顔をして、水を出したままにするこども、お風呂を走り回るこども、うるさくするこども、そんなこどもたちを次世代の教育のために怒る。今の世の中は不安な方向に向かっているような気がしてならない。だからこそ、今の時代にスーパー銭湯を始めました。

というような、メッセージが壁に記された銭湯に入った。最近は銭湯好きだと公言する人が増えてきて、プチブーム到来を感じる中でのこのメッセージ性とブームになる背景の合致はあるのか、すごくあるのか、それともないのかイマイチわかっていない。と思っていたら、同じお湯に滑り浸かるように入ってきた女性に声をかけられた。「もうひとつ?」私は膝に1歳のこどもを抱いていた。「ちょうど1歳です」

女性はいないいないばあや小さく湯を叩いてこどもをあやし、笑顔を見せるどころか泣きそうな顔になるこどもに「警戒心が強いのはいいことね」と言う。こどもが1歳になり、こうして通りすがりの人からこどもに声をかけてもらえるようになって1年、こどもを前にした年配の人がすべてをポジティブな言葉に変換する技術のことをなんて形容すべきか私はまだ自分のものにできていない。

「うちのもね、もうすぐ3歳なの」お孫さんですか、と言いそうになって、決めつけてはいけないな、と自分を諭している間に「そうなんですか」とだけ応える。「孫のお母さんがね、すごいの。この間なんて孫が私に怒って、ポカンって殴ってきたのね。私はすぐコラ!駄目でしょう、って言ったんだけど、そうしたらお母さん、お嫁さんがね、すみませんお義母さん、そういう頭ごなしの怒り方はやめてください、っていうの。それでどうするのかしら、って思っていたら、根気強く聞くの。そうやったら、おばあちゃん痛いでしょう、何がイヤだったか言葉で伝えてみよう。って。すごいわよね、根気強いの。お母さんも賢いのよね、それでこどもも賢くなるんだと思うわ」シャワーの音と湯けむりに負けないように声を張って、「それでちゃんと考えて伝えてくれるんですか」って聞いてみる。「うん、しっかりじーっと考えるの。こどもも辛抱強くね。うちの孫は賢いと思うわ」タオルを頭に巻いてニコニコ私から目を逸らさずそう話す。膝に抱いているこどもが目をこすったのを機に、「ありがとうございました」「ねむいわね、体温が違うからのぼせないようにね」で、私とこどもは火照りを取るためにぬるい露天風呂に向かう。ああ、火照り、ほてり、はラジウム温泉のおかげだけじゃないと思う。

 

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0歳こども旅ログ

こどもと3日違いで、つい先日26歳を迎えました。大学生半ばのころより月1旅行を志していたため、それと比べたら回数は少なくなりましたが、もう一度ペースを取り戻していけたら、と意気込む26歳と2週間すこしです。0歳こどもとの旅は、事前リサーチも荷物も膨れ、大荷物を抱える腕に赤い跡がつきますが、ひとりで行くのとも、大人だけで行くのとも、また違う新鮮な視点があり暖かい視点があり、非常に楽しかったです。例えば、実家を出たタイミングでもう家族旅行に行く機会なんてなくなった、と思っていましたが、なんとこどもを産んでから2回も実の家族と旅行に出かけました。すごい。お孫さんパワー。そんな風にフレッシュなことばかり楽しかった0歳こどもとのホテルログです。

 

  • 0歳7カ月 / 仙台松島

松島温泉 元湯 ホテル海風土【公式HP】|宮城県仙台松島海岸にある松島温泉元湯。客室露天風呂

こども浴衣○ お食事個室○ 食器○ 客室露天○ お布団○

こども用浴衣が(まだぶかぶかだけれど)かわいい。座敷の個室のため、食事に飽きて畳をはいはいしても大丈夫!なのが心強い。

夕食ではお魚屋さんもやっている旅館さんの力が遺憾なく発揮されて、刺盛りが新鮮で弾力があってとっても美味しい。中でもウニや貝や新鮮であってこそ美味といえる海の幸がとっておきに美味しいので本物。

 

松屋別館

こども浴衣× お食事個室- 食器- バスタブ○ ローベッド○

ちょっと例外な旅館風ホテルさん。ホテル・旅館の棲み分けも曖昧ですが、畳の和室にローベッド!これは宿泊・食事を別にしたい(熊本城をみて夜は馬刺し!)こども旅に、とてもいいバランスです。ホテル上階には人工温泉の大浴場も置きつつ、お部屋にはシャワーもバスタブも完備しているので、ちいさなお子さんのお風呂を心配される方にもお勧め。

松屋別館さんとセットでお勧めしたいのが、車で15分くらいの「パンオルヴァン」さん。モーニングセット(おすすめ5種のパンとサラダ・スープ・ドリンクセット)が600円、近所にお引っ越ししてきてほしいパン屋さんランキング堂々の1位です(このできたてパンなら倍払える)。

 

  • 0歳8カ月 / 湯布院

www.hinoharu.jp

こども浴衣× お食事部屋食○ 食器○ 貸切風呂3種○ お布団○

じゃらん営業さんイチ押し。歩いて楽しく賑わう湯布院で予約の取れない落ち着き宿。変わったところはないんだけれど、フロント前ちいさなロビーにはいい灯りがついていて、貸切風呂3種いつでも入りやすくて、談話室には湯上り用のお水があって、ご飯は季節ものがほかほかで出てきて、ちょうどいい距離感の仲居さん。それが揃うのがいい旅館、と賛同します。

ベビーチェアも用意してくださり、旅館の景観を壊すキャラクター食器もありがたく感じるように。

湯布院は歩いてめぐって、自宅用のものもお土産も郵送で東京にしゅっと。以前はお土産も全部スーツケースに詰めて詰めて帰っていましたが最近はスマートに郵送派。旅先から友人にお土産を郵送するの、サプライズ感が充分にあり、いたずら心が楽しいです。

すこし行くと大分を見渡せるロープウェイも。

 

  • 0歳11カ月 / 福島土湯

www.harumiya.com

こども浴衣× お食事個室○ 食器○ 貸切風呂3種○ お布団○

土湯は硫黄の香りがする柔らかい湯質。ちいさな温泉街も温泉たまごのお店やこんにゃく、足湯が並び、なんだかほっとする街です。写真がなかったですが、お部屋も素敵でシーンによって使い分けることができそう。私の両親はマッサージチェア付ベッドルームにして、私と夫は掘りごたつのある和室にしました。こども用のミニおひつやふりかけを置いてくださっていたのもポイント高くうれしい。

こけしが有名な土湯。雪しんしんと街に並ぶ大きなこけしに並ぶ姿も「旅にきたぞ!」という感想を抱けて、私は好きです。

 

以上、仙台松島・熊本市内・湯布院・福島土湯の4つの旅に一緒に行きました。初めてこどもと旅に行くまでは、何か想定し忘れていることはないだろうか…と考えていましたが、実際に行ってみるとミルクづくりのお湯だけ用意してもらえたらなんとでもなるな、と最近は思っています。それ以外で嬉しかったのは、大抵のお宿さんが用意してくれているこども用バスタオル、はるみや旅館さんの「こども用のミニおひつ」「ふりかけ」、1歳旅で出会った「2ℓのペットボトルお水(たっくさんお水を飲むし、お水さえあれば、消毒用の熱湯も気兼ねなくドバドバと沸かすことができる)」、1歳旅で出会った「こども用歯ブラシ・スリッパ(まだ使わないけれど、こども用の歯ブラシはかわいいパッケージでうれしい)」。そう、1歳旅はもう始まっているのです。こんな小さい頃の旅なんて覚えてくれないと思うけれど、白地図にたくさん旅の印をつけて贈りたいなあ。旅はいいもの。どんな旅が好きになっていくのかな、楽しみです。

とびきりの本棚

「好きの棚卸し」をブログでしている方を見つけ、読むのが楽しく手が止まらなかったので私も小説・エッセイから。10選としたら。

愛情生活 (角川文庫)

愛情生活 (角川文庫)

 

荒木陽子さん「愛情生活」

荒木経惟さんとの愛情生活。1997年版ですが、最近文庫も出版されていました。宿泊しているホテルでの食事に出るためにシャワーを浴びて、化粧をし直して、宝石屋を横目にレストランで待ち合わせる陽子さん、ひどく魅惑的です。じっとりした「夫婦だな」を感じるため息。 

なぎさホテル

なぎさホテル

 

 伊集院静さん「なぎさホテル」

荒木陽子さんの作品ともリンクしますが、本当に、これが人生なんだとしたらなんてことだろうと思う。荒木陽子さんの人生も伊集院静さんの人生もまるで小説みたい。この他、「浅草のおんな」も風情がある小説で何度も読み返しています。

静子の日常 (中公文庫)

静子の日常 (中公文庫)

 

井上荒野さん「静子の日常」

装丁に侮るなかれ。あらすじ「スイミングプールに通うことが趣味のおばあさんの日常」なんて、全然面白くないのに、読んでみると、こんな風に過ごせたらもう何も言わない、って言ってしまいそう。何も起こらない日常というものが大好きになります。もう過ごしているはずなのに、過ごしたくなります。

かなわない

かなわない

 

植本一子さん「かなわない」

ただ日常を書く行為とドラマチックは基本的には相反するはずなのに、植本さんが何をどう表現しているのか理解しきれないまま、連作を読みました。他人に勧めるとして、なんて言葉をつけたらいいのか分からないけれど、愚かであることはだめなことではないのかもしれません、ぜひ。

泳ぐのに、安全でも適切でもありません (集英社文庫)

泳ぐのに、安全でも適切でもありません (集英社文庫)

 

 江國香織さん「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」

江國さんはやっぱりずっと文学のミューズ。各年代で好きなタイトルも移ろいますが、今選ぶとしたらこの1冊でお願いします。江國さんは文章もいいけれど、タイトルもずっといい。「いつか記憶からこぼれおちるとしても」「号泣する準備はできていた」「流しの下の骨」なんて、タイトルでもう物語になっているじゃないですか。

ハヅキさんのこと (講談社文庫)

ハヅキさんのこと (講談社文庫)

 

川上弘美さん「ハヅキさんのこと」

ひっそりと、大切に書かれた文章を読める幸福を味わいます。川上弘美さんの「センセイの鞄」も食事のシーンが想像に素敵で好きだったけれど、この作家さんの短編は一つ一つが静かにすっとおさまり、少ししか小説を読むパワーがないときの薬みたいに思っています。

ジヴェルニーの食卓 (集英社文庫)

ジヴェルニーの食卓 (集英社文庫)

 

 原田マハさん「ジヴェルニーの食卓」

ご経験からテーマ特化型の小説に強すぎる方だと思いますが、そこはどうして美術が主戦場。美術に対する愛が文章をより進ませていると感じます。この小説を読んでから、美術館に行くたび、その作家たちの人生を思います。 原田マハさんは筋立ての上手なストーリーテラーで、夢中になりたいときに探す作家さん。

マチネの終わりに

マチネの終わりに

 

平野啓一郎さん「 マチネの終わりに」

 帯についていたのか、誰かがコメントを添えていたのか定かではありませんが、本当に、しとしと雨が降る中暖かな室内で読むのにぴったりの小説。ピアノの音が実際に聴こえてくるように沁み入り、雨とピアノは音にも画にも味ある組み合わせ。

火山のふもとで

火山のふもとで

 

松家仁之さん「火山のふもとで」

新潮社でずっと編集者をしていらした松家さんの1作目。瑞々しさ、というのならこの1冊を挙げたくて、避暑地であった軽井沢の別荘にいる空気を感じることができます。その空気をずっと吸っていたくて惜しむように残りのページを読む本です。こういった、振り返れば奇跡のひとときって人生にあるものですよね。

蛇行する川のほとり〈1〉

蛇行する川のほとり〈1〉

 

恩田陸さん「蛇行する川のほとり」

12歳、人生で初めて読んだ小説。読み返した回数も比例して多くなりますが、初めてのときから印象に残るシーンが変わっていく体験を面白く感じています。昔は少し年上の登場人物のハッとするシーンが怖くて怖くて、その分だけ読み飛ばすなんてこともしていたけれど、今となってはみんな年下、その切実性を懐かしく思う。

 

好きな本の装丁がこうして並ぶだけでもうれしい光景です。小説でないとしたら、キャスリーン・フリンさん "ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室"、漫画なら、よしながふみさん "愛すべき娘たち"。映画なら "Girl,Interrupted(邦題:17歳のカルテ)"、"Sweet November"、"Babette's feast(邦題:バベットの晩餐会)"。17歳のカルテは生々しさが圧倒的で、大学の卒論の研究対象に選び、何十回も大学のビデオブースで再生していました。雑誌ではよく「カバンの中身」特集が組まれていて、なんとなくめを惹かれてしまいますが、そんなふうに人の厳選した「好き」を覗くのは面白く、私も好きな日常を綴ってみようと思い立ちました。